アジアの国々は、世界でも稀なくらい組織されていません。
例えばアメリカを見ますと、アメリカとカナダががっちり組んで、さらにメキシコを入れて、北米自由貿易圏というのをつくっています。
ヨ−ロッパでは、通貨統合によって皆一緒に頑張ろうじゃないかとやっている。
アフリカにもそれなりの制度があり、中南米にも組織があるのですが、アジアだけがないのです。
せいぜいアジア開銀があるだけで、アジアの国々が集まり、一緒に制度を決めていく仕組みは、ほとんどありません。
普通、地域をまとめていくには、リーダーシップを発揮する国がなくてはなりません。
アジアでは人口、経済力で見て二つ、日本と中国ということになります。
ただ中国は長い間共産主義に走ったものですから、世界の流れからはずれてしまっていました。
一方、日本はアジアで大戦争を引き起こしたものですから、内外両方からリーダーのような役割はごめんこうむるというような形になってしまいました。
その中で出てきたのが、太平洋の向こうのアメリカです。
一九五○年代、日本の政策担当者が気づいたのは、アメリカ市場の有望性と、アジアには難しい問題があり、これにかかわると多くのエネルギーを消耗することでした。
例えば日本と韓国の問題、日本と台湾の問題、台湾と中国の問題、朝鮮半島の問題。
アジアにはまだほかにもいろいろな政治問題があるのですが、当時の日本の政治家は、これらのめんどうな問題は全部アメリカに任せてしまえばいいことに気づいたのです。
とにかく難しい話は全部ワシントンに任せて、我々はいいものをつくってアメリカ市場に売らせてもらえれば、これだけで経済発展はできると気づいたのです。
当時は米ソの冷戦のまっさかりですから、日本をソ連側に向けさせたくないアメリカも、それでいいよ、いくらでも買うよといって、どんどん買ってくれたのです。
しかもこの間、アメリカは日本が「自動車鎖国」と言われるほど徹底した保護主義に走っていたにもかかわらず、毎年大量の日本製品を受け入れてくれました。
その結果、日本はあっという間に高度成長に入りました。
こうして日本は、アメリカ市場をテコに使うという経済成長の法則を発見したわけですが、当時、隣の台湾や韓国は、国内でいろいろな政治問題を抱えて経済は低迷していました。
その低迷が続く中、彼らは隣の日本を見ると、いつのまにか一○年も二○年も先にアジアの国々には今でも、国内、国外にいろいろな未解決の政治問題があります。
しかし、これらを一応後回しにして、とにかくアメリカへ輸出さえできれば経済発展は成功するわけで、香港、シンガポールもそのパターンに乗りました。
最後にこの法則に乗ろうというのが中国なのです。
中国は長く共産主義を唱えてきましたが、三○年くらいしてみますと、一時はそんなに変わらないと思っていた台湾にも大きな差をつけられてしまいました。
日本は遠いところまでいってしまいました。
中国も共産主義をドブに捨てて、一九五○年代に日本が発見した法則に乗り始めたのです。
そういう意味で、アジア全体が今アメリカを向いているのです。
だからアジアにはまとまりがないというのは、日本も含めて皆アメリカを見ているからっているじゃないかと気づきます。
そうなると、韓国や台湾でも、政治問題に明け暮れているのはちょっと後回しにして、アメリカにものを売って経済発展をしようじゃないかとなります。
こうして日本の発見した法則を追いかけるようにして、韓国も台湾もアメリカ市場をテコに経済成長を遂げていきました。
今アメリカのおもちゃ屋に行きますと、中国製でない製品を探すのが大変なくらい中国製品がアメリカに渡っています。
逆に言いますと、中国もアメリカ市場なしでは食っていけなくなっているのです。
この中国の成長は今始まったばかりですから、世界の情勢が変わらないことを前提にすれば、まだあと数年は今までのパターンで経済成長ができるでしょう。
ただ中国の場合、ひっかかるのは、依然として政治問題が残っていることです。
特にアメリカとの政治問題は二つあります。
一つは貿易摩擦です。
中国の対米黒字は日本とどっこいところまできていて、ある月は日本よりも大きくなってきているほどです。
これがアメリカでどういう反応を呼ぶのかというのが、一つの問題です。
日本の外務省で一番偉いのは誰か。
外務次官ではなくて駐米大使だと言われるのは、まさに日本がアメリカを向いていることを如実に物語っています。
その結果、アメリカのいくつかの大手企業、ボーイングやモトローラなどは、今中国市場で大変な利益を上げています。
中国は、国内の携帯電話のマーケットをアメリカ企業にました。
独裁政治であるということには変わりがありません。
民主主義の国アメリカがどうとらえるかです。
対米貿易摩擦という点については、大変深刻な問題になりかねないわけですけれども、中国当局は実にうまく対応しているという気がします。
日本よりもはるかにうまく対応していると言えるでしょう。
中国は、アメリカ市場から閉め出されたら絶対成長できないことを分かっています。
アジアでアメリカの市場をテコにせずに成長した国は、日本も含めて一つもないのです。
このことを踏まえ、アメリカの市場から放り出されたら、どうしようもなくなることを彼らは一番よく分かっています。
それでも対米貿易黒字はどんどん出るのですから、どうやったら対米貿易黒字を出しながら、アメリカに文句を言われないようにできるのかを、彼らは真剣に考えたようです。
そこで出てきた答えは、国内市場をアメリカの大手企業に開放しよう、という政策であり開放したのです。
そうすると、中国に投資をして大変な利益を上げているこれらの米国企業は、ワシントンで中国ロビーになるわけです。
アメリカの対中貿易赤字が拡大し、ワシントンでいろいろ貿易摩擦が出てくると、中国の国内市場で儲かっているアメリカの大企業が、「いや、待てよ」と入ってきます。
「我々は、中国でこんな大きな商売をやらせてもらい、大変な利益を上げている。
あまり中国を刺激してもらっては困る」という声がワシントンで出てくるのです。
残念ながら日本の官僚には、そういう大局的な発想がないものですから、日本政府は航空協定から自動車部品まですべてに一歩も譲ろうとしません。
そうすると、いつになってもワシントンに友達ができず、アメリカから見ると叩きやすくなります。
日本を叩いて、アメリカ国内で痛みを感じる人はほとんどいないのです。
私もワシントンでずいぶんいろいろな貿易関係の討議に参加しましたが、一般のアメリカ国民からしますと、中国との貿易には依然として大変な抵抗があります。
アメリカ人の気質からして、民主主義者を戦車で踏み殺すような国となぜ我々は貿易しなくてはいけないのかという思いがあります。
そこまで我々は、成り下がったわけじゃない。
そんなことのために、我々はアメリカ合衆国をつくったのではないと思っています。
たま金儲け今、為替市場ではアジア通貨が下がったことに関連して、中国も人民元の切り下げをやるのではないかという懸念があります。
中国は通貨危機の始まる前のASEANと違い、巨額の貿易黒字を出しております。
しかもその黒字のかなりの部分は、対米黒字であります。
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